【ねこ】虹の橋_その3(全3話)「渡るのは再会後」

2023年7月22日

<野辺送り?>

 「ちぃ」が亡くなった翌朝、火葬場へ行く前に妻の提案で「ちぃ」が好きだった和室からの景色を見せてやろうということになりました。

 和室の障子の一番下は「ちぃ」のお気に入りの場所でした。ココからよく外を見ていましたね。

 

 それなら、家中のお気に入りの場所を見せてやろう。ゆかりの場所を巡るアレですね。

                   

 階段。

 階段を上がるときは私の少し前を登り、振り返っては私が来ていることを確認しながら上がっていました。「ワォ」「ワォ」と2・3段上がるごとについてきていることを確認しながら・・・。

     2階のベランダ、室外機の上。

 私が洗濯物を干すときは、一緒にやってきてココに登っていました。 ベランダの縁に手をかけて恐る恐る外を見ていました。

 妻は外を見ているときの足がかわいいとよく言っていました。

 

 寝室のクローゼットの中。

 夏場のクーラーが効いている部屋は寒すぎたのか、よくクローゼットの中で寝ていました。  

 

 押入の予備布団の上。

 誰もいない昼間はよくここで寝ていたようです。  

 

 私の部屋、机の上や下、椅子の上。

 椅子の上は「ちぃ」の毛だらけです。他のコたちはあまり寄りつかない2階の部屋にも「ちぃ」だけは私の居るところには必ずと言っていいほどついてきていました。  

 

 中2階の倉庫の中。

 この中で捜し物をしていると、必ず「ちぃ」が様子を見に来ていました。捜し物が終わって外へ出るときは、「ちぃ」に外へ出るよと声をかけます。

 まだ遊びたいと言っているかのように「ワーォ」「ワーォ」と文句を言いながらも素直に私の後について外へ出ていました。

 その姿が頭に浮かび、声を上げて号泣してしまいました。

 かわいかったなぁ、俺はさみしいぞ!ちぃ。  

 

 そして風呂場。

 ココは他のコは近寄らない「ちぃ」の居場所。

 西日が強く差し込んだ窓に「ちぃ」が座っている姿が印象的でした。

      着替えなどを入れる籐の家具の上。      ココへ垂直にのぼる技は他の誰にもできない「ちぃ」の特技。

  歯磨きをしていると電動歯ブラシの根元に触ろうと手を伸ばし、歯ブラシの柄を口にくわえてガタガタ振動を楽しむ姿が思い出されます。

 トイレ。  

 私がトイレに入っているときは、外から戸を開けろと要求します。少しだけ扉を開けると、そこだけ白い右手を差し込み、器用に戸を開けて中に侵入してきます。私のひざに両手をかけて「ワォ、ワォ」と話しかけるのです。

 私の入浴中やトイレにまでついてくるのは「ちぃ」だけでした。    リビングから玄関までの「ちぃ」が好きだった場所を見せて回り、別れを惜しみました。

 

<火葬場へ>

 ペット火葬場へは、車で約30分。「ちぃ」を家に連れて帰ったあの日と同じく大雨の日でした。    受付を済ませ、妻と待合室へ。  その待合室に置いてあったのが、次の詩でした。

虹の橋

天国のほんの少し手前に 「虹の橋」と呼ばれるところがあります。

この地上にいる誰かと愛しあっていた動物は、 死ぬとそこへ行くのです。

そこには草地や丘があり、 彼らはみんなで走り回って遊ぶのです。

食べ物も水もたっぷりあって、 お日さまはふりそそぎ、 みんな暖かくて幸せなのです。

病気だった子も年老いていた子も、みんな元気を取り戻し、 傷ついた子や、 不自由なからだになっていた子も、 元のからだを取り戻すのです。

まるで過ぎた日の夢のように。

みんな幸せで満ち足りているけれど、 ひとつだけ不満があるのです。

それは自分にとっての特別な誰か、残してきてしまった誰かが ここにいない寂しさを感じているのです。

動物たちは、 みんな一緒に走り回って遊んでいます。

でも、ある日その中の1匹が突然立ち止まり、遠くを見つめます。

その瞳はきらきら輝き、 からだは喜びに震えはじめます。

突然その子はみんなから離れ、 緑の草の上を走りはじめます。

速く、 それは速く、 飛ぶように。 あなたを見つけたのです。

あなたとあなたの友は、 再会の喜びに固く抱きあいます。

そしてもう二度と離れたりはしないのです。

幸福のキスがあなたの顔に降りそそぎ、 あなたの両手は愛する友を優しく抱きしめます。

そしてあなたは、 信頼にあふれる友の瞳をもう一度のぞき込むのです。

あなたの人生から長い間失われていたけれど、 その心からは一日も消えたことのなかったその瞳を。

それからあなたたちは、一緒に 「虹の橋」を渡っていくのです。 (作者不詳)

作者不詳とありますが、最近になって作者が判明したんだとか。  よくペットが死んでしまうことを「虹の橋を渡る」と表現しているのを見ていたため、勘違いしていましたが、この詩を読むと「虹の橋へ行く」のが正しいんですね。虹の橋を渡るのは、飼い主がきてから一緒に渡るものなんだとわかりました。  しばらくすると祭壇へと案内されました。  左下に見えるのは「ちぃ」が好きだったオモチャです。これでよく遊びました。

 夜、私が寝室に上がると、一旦一緒に2階へ上がった「ちぃ」は、ひとり1階のリビングへ降り再び「ウニャ、ウニャ」と声を出しながら、オモチャのネズミをくわえて2階へと上がってくるのです。

 棒の先にネズミを付けたおもちゃも持ってきます。ネズミ部分をくわえるので棒の部分は階段のあちこちにぶつけてガチャンガチャンと大きな音を立て、首がおかしくなってしまうのではと心配させるほどでした。

 まだ眠くない遊ぼうという意味なのか、お気に入りのオモチャをそばに置いて眠りたいということなのか、毎日のように夜は2階へ持って行き、私の寝ているベッドの左脇に置いておきます。

 そして昼間はリビングへといつのまにか運んでいたものです。    

 

 係の方から「虹の橋」の説明を受け、お別れの儀式。

 妻とかわるがわる「ちぃ」をなでてやりました。

 遺髪を保存するかと聞かれ、ヒゲやさび柄と分かる部分の毛をとりました。    

 

 いよいよ火葬の炉へと移動です。最後にと、また何度もなでてやります。  

 

 係の方が確認後に炉の扉を閉めました。

 

 横で妻が何か言いたげだったので聞いてみると、もう一度だけさわりたいという。

 扉を閉めたばかりなのに係の方に申し訳ないかな、とは思いましたが、後悔が残るといけないと思い、扉を開けてもらいました。

 

 ふたたび「ちぃ」を夫婦で何度もなでました。  

 係の方もあきれたかなぁ。

 

 ようやく炉が閉められ、待合室へと戻りました。

 待合室では、遺骨などを入れる小さなロケットを買い、待ちました。

 妻にも色違いのロケットを買って持つかと聞いたところ、迷った末に買わないと言いました。理由をハッキリ聞いたわけではありませんが、おそらく私と2つになることから分けるのはおかしいと思ったか、いつも私に付いて回っていたコなので私が持っていることがふさわしいと思ったのではないかと推測しました。  

 

 係の方がやってきて、アンケートということで「ちぃ」のことを聞かれました。

 どのように家族に迎えたのか、どこで普段寝ていたのか、どういうコだったかなどでした。  

 質問に答えるうちに、どんどん想いがあふれ出しました。  

 私にべったりでトイレにも風呂にもついてくること、ネズミのおもちゃを投げると取ってくること、夜寝るときにはおもちゃを持ってくること。

 かわいくてかわいくて仕方なかったんです・・・  

 涙がこぼれ、しゃくり上げて泣いてしまいました。

 

 言葉が詰まった後は妻がフォローして話してくれました。

 家族以外の人にペットのことを話す機会もあまりないので、こういったアンケートの形で話を聞いてくれるのも、想いを吐き出させるサービスなのかもしれないですね。  

 さて、「ちぃ」は、すっかり骨になってしまいました。

   先ほど買ったロケットに一部の骨を納め、残りは骨壺に収めました。

 ロケットには、「ちぃ」の特徴のひとつである「かぎしっぽ」を入れようと探しましたが、どこが「かぎ」だったのか分からなくなっていました。一番小さな尻尾の骨と手指の先にツメの根元がついた部分を入れました。  

 妻は、骨を拾うハシの先で頭(の骨)をなでてやっていました。なごみました。

 ロケットには遺髪も入れて私のスマホにつけています。    その夜は、大量にあった写真や動画を整理しつつ見ていました。

 動画から聞こえる「ちぃ」の声を聞いて、「くぅ」がようやく「ちぃ」がいないことに気がついたのか「フニャフニャ」言いながら風呂場の方へ「ちぃ」を探しに行ったりしていました。    

 「ちぃ」がうちに来たばかりの頃は、「くぅ」が母親のように「ちぃ」をかわいがっていました。

 近年も「ちぃ」と一緒にいたのはいつも「くぅ」でした。やはり居なくなったことに気づいたのも「くぅ」が先だったな。

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