亡くなった「ちぃ」のような行動をするようになってほしくて、「さび柄」の子猫を探して里親募集のサイトを探す日々が続いていました。できれば「かぎしっぽ」のコを探したいのですが、そういう条件設定で検索することはできなかったのです。
探そうと思いついたのは6月でした。「ちぃ」が生まれ変わることを期待して「ちぃ」が亡くなった日(5/6)以降に生まれたコが条件です。サイトに掲載されているのが大体生後2ヶ月ぐらいからでしたから早くても7月にならないと条件をクリアすることはありません。
里親に応募するにはどういう心構えが必要なのか、あらかじめ勉強しつつ目的のコが現れたときにあわてないようにしたいと早い時期から探したのです。
候補があらわれた
8月14日朝8時頃。この頃になるとサイトを探す日課は、朝・昼・夕方・夜とそんなには更新されていないのに、1日4・5回の頻度でした。仕事に出発する直前でもパソコンを立ち上げ、サイトを確認していると新しいさびねこ候補があらわれました。
顔の模様が「ちぃ」に似ています。月齢が2ヶ月ということは、6月中旬生まれでしょうか。しかし、写真が1枚しかなく、いまいち判断材料にかけています。県内で割と近い。でも顔つきは別の募集にいたコの方が似ています。その子は県外でしたし、ひょっとしたら顔つきは大きくなってしっかりしてくると似た感じになるかもしれない。
とりあえず仕事に行かないと!
質問してみる
日中、考えた末に夜になって質問を送ってみることにしました。「質問を送る」というアクションを起こすのは初めてのことでした。
写真を追加してほしいということ。誕生日がわかれば教えてもらいたいこと。尻尾はどんな感じですか。という3点です。
約30分後、返事が来ていることに気がつきました。
「ご検討ありがとうございます。
写真増やしました。
尻尾はかぎ尻尾です。小さい時の写真ですが載せました」
急に背中に電気が走ったような衝撃で目の前がひらけたような気がしました。
すぐに妻に報告。応募しよう!
応募した
応募フォームを開いて順に必要事項を書きました。
若干興奮気味で書いたので必要のない個人情報まで書きすぎていることに気がつき、個人情報を消して書き直し、このサイトを読んでいただくのが早いかもしれないと思い、URLを書きました。
翌日。職場で昼休みに回答を確認しました。新たな写真もアップされていました。そのうちの一枚。
背中から尻尾にかけての姿が、小さい頃の「ちぃ」にそっくりです。思わず目頭が熱くなり、まぶたを押さえたら涙がこぼれてしまった。
目をこすり鼻水をすすっていると隣の係の女性が、お手本のような2度見をしてギョッとした顔で私を見ました。まずい、泣いているのがばれた。
ハンディファンをいじって、その風で目が乾いて痛いようなふりを装った。多分ごまかせてはいないがまあいいか。
回答を読むと、「かぎしっぽ」の件を、「かぎ」なのかどうかよくわからないとの記述がありました。しかし、写真のしっぽは「ちぃ」にそっくりだし、この尻尾の写真を見て心が動いたのだ。この時点では既に「かぎしっぽ」であろうとなかろうと関係なくなっていたのかもしれません。この子にしよう。というか、この子を飼うつもりで申込フォームを書いたのです。
夜になり、またやりとりをしました。
私の送信したメール全文
「まず、結論を先に言います。
この子を譲ってください。よろしくお願いします。
新しい写真をアップしてくださりありがとうございます。5枚目の背中から尻尾のあたりが写っている写真を見ると、亡くなったうちのさび猫「ちぃ」が小さい頃にそっくりで職場の昼休みなのに涙がこぼれてごまかすのが大変でした。「かぎしっぽ」は、「ちぃ」が小さい頃はこんな感じでした。長さも形もそっくりです。
「ちぃ」は、私にとって、家族にとって特別なコでした。生後3週間くらいから11年11ヶ月、一番若いコが一番に逝ってしまいました。
先住猫と合わせてネコ3匹を約12年、あたり前に世話してきたところ、急に2匹になり、力が抜けたような気分です。トイレも食器も3匹分あるのに、2匹分しか使わないため、物足りない感じです。
亡くなってからの3ヶ月間はとてもさみしく辛い時期でしたが、新しいコを迎えるのは未だ早いような、あのコに申し訳ない気がしてならないのです。
容姿が似たコを探していたのは、全く違う毛色のコを飼うと、「ちぃ」のことを忘れて違うコをかわいがっているように感じてしまうからです。似ているコなら、見るたびに「ちぃ」を思い出すことができます。あのコの分まで愛情を注いで大切に大切に育てていきたいのです。
さて、先住猫との相性ですが、もしも、お試し期間を設けても、おそらく家族全員、情が移って返したくなくなるのが目に見えています。
16才の茶トラオスは、このコに限らず多分どんな猫とも合わないでしょう。しかし、もう一匹の14才ハチワレメスを迎えたときも、「ちぃ」を迎えたときも威嚇はしてもケガをさせるような攻撃はしませんでした。
14才のハチワレメスは、物事に動じず、「ちぃ」を迎えたときは我が子のようになめ回して面倒を見てくれました。きっと今度も母性を発揮してくれるものと思います。
以上のようなことから、お試しはなしで、連れてきていただきたいです。
よろしくお願いします。」
その後、連絡先を交換し譲渡の具体的な日程を調整した結果、4日後に私の自宅まできていただくことになりました。
さび猫の到着
4日後の土曜日。保護主の方は約40km離れた街から車で連れてきてくれました。
キャリーボックスに入ったコは、とても小さかった。保護されたときが生後1ヶ月程度で餓死寸前。一緒にいたコは既に息絶えており、このコも微かに息をしている状態だったそうで、それから約1ヶ月半でここまで回復したようです。保護主さんによると、あと半日保護が遅かったら危なかったそうで、生きる力があるはずと言われました。
保護主さんを見送った後、さびのコを部屋に解放しました。
最初は恐る恐るという感じでしたが、すぐにあちこちを探検し始めました。「ちぃ」の遺影の前に置いてあったネズミのおもちゃを発見し、大喜びで遊びます。
遊びは飽きることなく続き、そのエネルギーに驚かされます。
先住の2匹の老猫は、とまどいながら別の部屋に避難。
命名問題
今回、難航したのは、このコの名前でした。
複数の猫がいる場合、猫自身が他のコと自分の名前を区別できるように、これまでも名前の最後の母音がかぶらないように気をつけていました。
最初が「ちゃと」、母音が「あ」と「お」。次は「くぅ」、母音は「う」。次が「ちぃ」、母音は「い」。という具合です。
これは最近になってネットの記事で、名付けの方法として有効だと知りました。
この規則から考えると、現在、空いているのは「い」と「え」。
事前に考えた候補から「みぃ」「りん」のふたつに絞っていました。
「みぃ」は、猫の名前としては一般的で、妻が結婚前に飼っていた猫につけていたようですし、私の実家にも「みぃ」はいた。
「りん」も私の実家で同音の「凜(りん)」という犬を飼っていました。そもそも「ん」の母音は何だ?
調べると「ん」に母音はないらしい。「りん」をのばして発音すると「りぃぃぃん」となり、「ん」の前の「り」の母音が「い」だから「い」の括りでいいか。
名探偵のコナンが毛利蘭を「らぁぁぁん」と叫ぶのを想像するといいですね。
本人(本猫)を見てから決定しようとは思っていました。
ところが、本人を観察していると、なんとなくどちらでもなく、姿がそっくりなためにやっぱり亡くなった「ちぃ」、または「どびぃ」。
「どびぃ」とは、ハリーポッターに出てくる屋敷しもべ妖精の「ドビィ」から連想しました。劇中のドビィが少なからず印象が悪いのです。却下です。
そして「みぃ」より「りん」の方がいいかという消去法で決定。違和感たっぷりでしたが、2・3日呼び続けてようやく定着しました。
姿形から2回に1回は「ちぃ」と呼んでしまってますけどね。
10万ボルト?
容姿は、「ちぃ」にそっくりです。正面から見たときだけ、顔の形、目、胴体が細長いことなどに違いはたくさんありますが、斜め上から見た姿、目を閉じて寝ている姿は、大きさが違うだけで「ちぃ」そのもの。しっぽは「ちぃ」と同じく、興奮状態で膨らんでいる様は「たぬき」のようです。そっと触ってみて判明したのですが、なんと「かぎ」は2ヵ所折れていて「N」字型、稲妻形でした。ピカチュウの尻尾のようです。
「かぎしっぽ」も珍しいが、2折れはさらに珍しいのだとか。幸運を引っかけるという「かぎしっぽ」、2折れだともっと幸運になれるのかもしれない。
「りん」の二つ名は「サンダーボルト(稲光)」か「10万ボルト(ピカチュウの必殺技)」ですな。