永井豪さんのまんが「デビルマン」です。アニメ版の有名な裏切り者のデビルマンとはかなりちがいます。
全5巻と短い巻数で、これほど完成された作品に出会っていないと思えるほどのまんがです。おそらく後に出てくるいろんな漫画がこの影響を受けているんじゃないでしょうか。
<完全ネタバレ注意>
アニメのデビルマンの方を先に見ている方は、最初からイメージが覆ります。
太古の昔から地球に住んでいた先住民族が「悪魔」です。「悪魔」が実際に存在すること、現在その「悪魔」が復活しつつあること、様々な動植物と合体する能力がありその体自体が武器になっていることなどが丁寧に描かれていきます。
主人公の「不動明」は、最初は普通の人間です。親友の「飛鳥了」から「悪魔」の情報を聞き、共に「悪魔」と合体して自分自身が「悪魔」に対抗する武器になろうとします。体は「悪魔」と合体するも、意識は「人間」の「悪魔人間(デビルマン)」となるのです。永井豪の初期の絵柄は、とてもデビルマンの世界観と合っていて怖いのです。
第1巻で「不動明」が「悪魔人間」になってから、第2巻では、アニメの第2話に出てきた「妖鳥死麗濡」との戦いです。「シレーヌ」ではなく「死麗濡」です。暴走族の落書きのような当て字感が最高です。
アニメの第2話のシレーヌまでで第2巻だからこの調子で続くのかと思いきや、第3巻の中盤から怒濤の展開になります。
悪魔が合体できる設定からの、人間への無差別合体攻撃がはじまります。悪魔が人間と合体するときはむずかしい条件があり、理性がある人間に無理矢理合体すると双方が死んでしまいます。それでも「悪魔」側が合体攻撃を仕掛けたのは、人間の心理をついた巧妙な罠だったのです。
ほんの1分ほど無差別合体攻撃を仕掛けただけで、人間側は大混乱、人間同士が疑心暗鬼になり、緊張関係にあった国同士は、戦争状態となります。核ミサイルが飛び交い世界規模の大混乱です。
さらに、いわゆる有識者(高名な生物学者)から「悪魔」は「人間」が変化したモノだと発表します。あながち間違いでも無いような気がしますが・・・・。「人間」が変化するということは、誰にでも「悪魔」になる要素があるということになり、近くに居る「人間」もいつ「悪魔」になってしまうか分からない状況に。
そして、それらの「悪魔」に対抗するため、武装した「悪魔特別捜査隊」が発足、人間が人間を捕まえて殺すというすさまじい展開になっていきます。「悪魔狩り」です。
また、無差別合体攻撃によって「悪魔」の意識を乗っ取る「悪魔人間」が偶然に生まれていました。全世界からそれらの「悪魔人間」を集め、「悪魔」と戦う胸熱展開!
ところが、明の「悪魔人間」への合体を手助けした親友の「飛鳥了」がテレビに出演し、「悪魔」が「人間」と合体するにはむずかしい条件があることを言わず、誰にでも取り憑くことができると発表。さらに不安を煽るのです。録画されていた「不動明」が「悪魔人間」になった場面が、その変身の模様がTVで放送されたのです。
驚く牧村家の人々、明は事実を認めた上で心は元の人間のままだと説明し、悪魔狩りから逃れるために出て行きます。
悪魔特別捜査隊は、明が牧村家にいなかったため、代わりにおじさんとおばさんを連れて行ってしまいます。
悪魔特別捜査隊に捕まっているおじさんたちを救出に行くと、おばさんが殺されているところを発見、逆さづりにされ腕はちぎれて血まみれで死んでいます。おじさんも最後に子供達のことを明に託して血を吐いて死にます。うぁ~。
そのころ牧村家には、暴徒化した「人間」たちが松明(たいまつ)を持って取り囲み、家に侵入してきていました。明の仲間も次々と殺され、タレちゃんの首のない胴体が階段を転がり落ちます。タレちゃんの生首の髪をわしづかみにした暴徒が美樹へ迫ります。
ついに美樹の体に包丁が突き刺さり、血が吹き出します!!
明が駆けつけた頃には、暴徒たちが手に手に人体のパーツを突き刺した棒を持って喜んでいました。そして、美樹の生首!。
準主役級のキャラクターの死亡の事実だけでなく、あまりにもショッキングなビジュアル。ここまでこのマンガの中では血しぶきは当たり前のように出ていましたが、最終巻の第5巻では、さらにひどく、白黒のため血は黒いのですが、真っ黒です。本を閉じて横から見ても黒いのです。絵柄と相まってマンガの表現力に衝撃です。
「地獄へ落ちろ!人間ども」
狂ったように暴徒達が笑っている中に、明が自らの体から炎を放ちながら飛び込み、人々もろとも焼いてしまいます。守るはずだった人間を自らが焼くことになってしまうとは・・・・。
人間が滅び、悪魔と悪魔人間、悪魔のラスボスである堕天使サタン(飛鳥了)と不動明の最終戦争(アーマゲドン)。
はだかで横たわる明と了の会話。話の途中からいつの間にか明の目が閉じている・・・。了が起き上がった場面で、明の腰から下がちぎれていて下半身がない。
正に衝撃のラストです!
原作漫画が発表された頃、当時の小学生の間でも、この原作漫画の衝撃の噂は広まりました、最後に主人公が死んでしまうことなどは信じない者がいましたね。
絵を描くのが好きだった私は、後に単行本を手に入れ、模写しまくってました。書いてないページがないくらいにw
物語的にも衝撃的にも過去最高のマンガです。
後のマンガで「バイオレンスジャック完全版」「デビルマンレディー」などでサタンとデビルマンが出てきて最高にテンションは上がるのですが、最初の「デビルマン」を上回る物語はないように思います。
現在、加筆修正したバージョンの単行本が出ているようですが、絵柄が変わった後の加筆でどう変わっているのか、後日確かめてみたいと思います。