小学1年生の時、私は担任のK岡先生(女性)がとにかく怖かった。
1ヶ月に1回程度、持ち物検査をされていました。学校に関係ない余計なものを持ち込んでいないかということではなく、ハンカチやちり紙(この言い方が古いな・・・)を持っているかどうか、爪が伸びすぎていないかなどを順番にチェックされるのです。清潔検査と言っていたかもしれません。
K岡先生が座っている机の前に一列に並び、先生の机の上にハンカチとちり紙を置き、両手を広げて爪の先を先生に見せます。
私はいつも爪が伸びていました。両親はあまり細かいことに口やかましく言う方ではなかったし、その頃は二番目の弟が生まれたばかりでしたから男の子ばかり三人の子育てで大変な時期だったので、あまりかまっていられなかったのもあったのだと思います。もちろん、自分でそんなことに気がつくタイプではありません。とにかくいつも爪は伸びていて、泥遊びも山遊びも日常的にしていたので爪の中は黒くなっていることも多かったのです。
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K岡先生の机にハンカチとちり紙を置きます。ハンカチとちり紙はポケットにずっと入れたままのものです・・・・。くしゃくしゃです。持ってきていないときは、「忘れました」と申告します。
そっと両手を広げ、爪の先を先生に見えるように机の上にのせます。すると、爪を見た先生は・・・
K岡先生「鬼のつめぇぇぇ!」
バチーンと手のひらで私の手の甲を叩きます。
叩かれた人は翌日までにきちんと爪を切ってきなさいと指導されるのです。大人の先生からすればたいして力はこめていないのでしょうが、小学1年生の子どもにはとても痛かった。また叩かれた恐怖は相当のものだったはずなのですが、定期的に爪を切るということは定着しませんでした。
定期的に検査は実施されるのに、そのときになってやっと自分の爪が長いことに気づくのです。そして手を叩かれることが確定した恐怖とともに順番を待つことになるのでした。
爪の件は痛い思いをするため忘れないのですが、ハンカチとちり紙はくしゃくしゃでも持ってさえいればそれほど注意されなかったような気がします。それとも叱られているのに痛い思いをしていないから忘れているのかもしれません。
また、こんなこともありました。
給食の準備中。1年生の給食の準備は6年生が手伝いにやってきます。給食のおかずやパン、牛乳などが順番に並べられていました。当時の牛乳は牛乳びんに入っており、金属のワイヤーでできた四角い網かごに20本ほどが入っているものでした。おかずやパンは机の上でしたが、牛乳のかごは重いためか床に置いていました。
1年生たちは自分の給食を受け取るために列を作って並ぶところでした。狭い教室の中に6年生が数人入っており、給食の品物と児童の列でごった返していたときです。
わたしは、教室の外で手を洗い、ごった返す教室の中に入り列に並ぼうとしていたところでした。牛乳びんのかごが置いてある手前でバランスを崩し、牛乳びんのかごの上に転びそうになりました。
しかし、牛乳びんのかごを大きくまたぎ、軽くジャンプしてかごの向こう側に着地できました。
セーフセーフ。転ばずにすみました。
すると、すぐそばに居たK岡先生が大きな声で怒鳴ったのです。
K岡先生「こらっ!食べ物をまたぐとは何事かーっ!」
一瞬、なぜ叱られたのかも分からず、大きな声と怒りの剣幕にただただたじろぎ、身動きができませんでした。
しばらくして(ああ、牛乳のことだ、これ食べ物じゃなく飲み物・・・)と自己弁護を考えていたことをおぼえています。謝ったりもできなくて黙っていたままでした。
元の場所に戻るのに、もう一度牛乳をまたぐしかなく、またごうとしてもう一度怒鳴られました。その後、牛乳びんのかごを足の先が通れるだけずらして、つま先で立ったまま通り抜けました。
牛乳を飛び越えてはいけないとは思っていなかったので、その(親からも誰からも教えてもらったことがない)ことで大勢の前でひどく叱られたことに理不尽さを強く感じた覚えがあります。理不尽という言葉は知らなかったでしょうけどね。
どちらのエピソードも、その後の私の生き方に強く影響しているのですが、その頃は本当に怖い先生としか思っていませんでした。
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