かつての大女優「若草いずみ」、子役時代からの美貌も年とともに顔に深いしわやあざができてしまいます。その自分自身の変化を受け入れられず、精神に異常を来すようになります。ついには、若さと美貌を取り戻すため、おそろしい計画を企てます。娘を出産し、その娘に自分の脳を移植するというものです。
やがて、娘を出産したいずみは、芸能界からも世間からも姿を消します。顔にできた大きなあざを隠さずに過ごすことで、世間からもわからないようにひっそりと暮らしていたのです。いずみは、娘をさくらと名づけ、娘の頭が十分大きくなるまで育て上げます。一方、いずみの主治医は、いずみの大きな自宅の2階で脳移植手術に備えて動物実験を繰り返していました。さくらは、母いずみが企てている真の計画に気付いてしまいます。さくらのおそろしさで頭がおかしくなりそうな表現、動物の大量の死骸の描写や手術に使うための2台のベッド、そしてさくらは捕らえられ、手術台に縛られ脳手術へ。脳手術の詳細な描写・・・・。
さくらは、意識が残ったままで脳を取り出されることになり、取り出されたその脳は床に捨てられる。いずみの脳を移植されたさくらの体は、やがて目覚める・・・・・。
この漫画の単行本は、小学生の頃、父と一緒に近所の本屋に行った際、弟が買ってもらったモノでした。当時の少女コミックスで全6巻中の第1巻のみです。始めて読んだ少女漫画で、その描写の細かさと心理描写に衝撃を受けました。ひたすらに怖かったのです。
実はこの後の第2巻以降を長い間読むことはありませんでした。第2巻の冒頭部分のみを本屋さんで立ち読みをしたことはあったのですが、さくらの先生との恋愛、不倫といった昼ドラ的なドロドロ人間模様に子供だった当時はおもしろさを感じなかったのでしょう。第1巻のおそろしい手術の場面のみが記憶に残ることになったのです。
大人になってから、後半を含めて最後までを読むと、あの頃の恐怖が蘇るとともに、最後にどんでん返しが待っていることを知ります。脳の移植手術どころかいずみの主治医の先生までもが実際にはなかった、いなかった。どこからが現実かわからない人間の精神、心の作り出す恐怖が漫画ならではの映像で入ってきます。子供の時に読んだ印象とは全然別の印象を持ちました。
是非、全巻読んでみてください。