元郵便局員です。主に保険内務担当でした。といっても特定局の窓口、普通局の保険課、貯金保険課、郵便課、総務課とほぼ全ての事業を経験し、辞令で異動した回数は17回。管理者にはならず退職しましたが、郵便局の現場経験は人一倍だったと言えるかなぁ。
年末の時期、ネット上では「年賀状の不要」論が多く流れています。私は年賀状の文化そのものは好きです。プリンターが普及する前は「プリントゴッコ」で印刷した上に色鉛筆でイラストの仕上げをして出してましたね。しかし、仕事上で年賀はがきの販売に関わったことで、悪い感情がこびりついていくことになりました。
販売ノルマは当然のように昔からありました。営業に厳しくなかった頃には、本気で窓口で声をかければきちんと販売枚数をこなすこともできました。
しかし、前述のとおり私は望む望まないを含む人事異動を繰り返しています。局所を異動する際は、私の「お客様」を引き抜いていくことは、私の性格上できませんでした。きちんと元の局所の同僚や先輩方に引き継ぎをして出て行ったのです。平均すると2年弱に1回は異動していることになり、新しい「お客様」を獲得しても、場合によっては1回限りになることもありました。
さらに、29歳で総務主任の役職(一般の会社では係長?)になり、35歳で課長代理(一般の会社の課長?)と、現場上がりでは割と早めの昇進だったのですが、窓口でお客様と接する機会はクレーム対応ばかりになり、実質勤務時間内に「お客様」を獲得することがどんどん難しくなっていきました。
昔は、上司がお客様の勧誘したにもかかわらず、部下へ成績をゆずったりといった行為を何度も見て育ち、そういう行為をカッコイイと思っていたモノですが、個人個人の責任を強く求められるようになってくると、部下のことより自分の成績を上げることでいっぱいいっぱいになりました。
部下と一緒に全体で頑張っていこうとする姿勢は全く評価の対象とはならず、自分のことだけを頑張っている役職者の方が評価されるという時代になったのです。
全く成績にならないバイク自賠責保険の手続きなどは自分が引き受け、個人の成績になる簡易保険は部下にゆずる。窓口に出ない後方事務の担当も「年賀はがき」「暑中見舞いはがき」「ゆうパックの会」などは、全員一律でノルマが課せられます。本社、支社に言わせれば、ノルマは存在しないということになっていますが、郵便局単位で目標があるものを社員に振り分けないはずはありません。
いつ、どこで「営業」するのか?
休みの日に近所を回るとか?
年賀はがきの時に何度かやりました。当然無給、完全サービス。休日に1日中回っても、数十枚注文が取れればいい方です。各家庭で出すはがきなんて10枚程度、中には2枚なんて方も・・・。売り上げに反して、ご近所への「借り」は大きく、町内会の幹部役員を引き受けざるを得なかったこともありました。
そもそも、郵便局でしか取り扱っていないはがきを誰と争って営業するのか。
もちろん、他の郵便局の人との取り合いです。
ああ、ばかばかしい。
発売日を過ぎたら今度は2枚とか10枚のはがきを、お届けしなければなりません。ええ、もちろん、休日に無給で。
代金を現金でいただいたら、領収証を作成してお渡しします。建前上はいろいろとルールはありますが、結局は禁止されているはずの立て替え払い。事前に領収証を作成してお金を立て替えて支払い、はがきをお渡しするときに代金と引き換えに領収証をお渡しする。
私金を事務室に持ち込んではいけないが、はがきの代金などの郵便関係代金は大目に見るという矛盾。
郵便関係の成績は、社員ごとの成績を貼り出され、名指しこそされなくても朝礼で「叱咤激励」されます。私など役職者は、自分のことは棚に上げてでも部下へ「叱咤激励」する立場でした。
何という無駄な労力。
そこで手を出すのが、「自爆営業」です。休日を何日も無駄に「サービス」するよりも、買い取ってしまえ。です。買い取ったはがきは金券ショップへ持ち込みます。地方の郵便局員はなんと郵送で売るということもできるのです。そういうわけで、発売日直後でも金券ショップには、市場価格よりも「安い」はがきが買えてしまいます。金券ショップの手数料もかかりますから、さらに安い金額で買いたたかれたその差額は・・・・郵便局員の給料から支払われているのです。
一方では、身内で食い合って荒らした正規の金額で購入するお客様、郵便局員の自爆営業分安くなったはがきを購入するお客様も。市場は崩壊してしまいます。
民営化直後の年賀はがきの販売時に、貯金や保険の渉外社員を使ってでも売り上げを上げようという年がありました。渉外社員の時間を取ってスーパーなどの店先で年賀はがきの販売をさせたのです。
当然、その間の貯金、保険関係の成績は出ず、次の年からは、年賀はがきの販売に渉外社員を使うなということになりました。当たり前です。はがきを数枚売る労力と貯金、保険を売る労力はイコールではありません。ゆうちょ銀行やかんぽ生命からもらう手数料の方が数十倍も高い金額だからです。
年賀はがきの販売にかける労力を他の手数料が高い商品に回した方が、全体の効率はよいのです。
数々の矛盾とプレッシャーに、私の心は壊れ、退職に至りました。今回の記事を不快に感じる方には大変申し訳なく思いますが、所詮負け犬の遠吠え、あくまでも「私見」として読んでください。