【雑記】くちびる青し

2018年12月3日

小学1年生の時、隣の席に座っていたK子ちゃんと仲よくしていました。K子ちゃんは、右目の下に泣きぼくろのあるかわいいコでした。小学校の出席番号は「生まれ順」でした。K子ちゃんは10月2日生まれ、私は10月5日生まれで、男女別に並べたらどちらも前から15番だったと思います。背の順でも同じくらいだったので、いつも隣に居たのです。教室では窓際の後ろから2番目にK子ちゃん、その横の窓際から2列目の後ろから2番目が私でした。
小学1年生ですから、初恋といえるのかどうかも分かりませんが、K子ちゃんは、私のことを好きだと言ってくれました。私も好きでした。

マット事件

ある日、図工の授業で粘土でなにかを作るという課題がありました。みんなが作り始めると、担任の先生は職員室へ帰ったのか、教室からいなくなりました。担任の先生は前回の記事で書いたあの怖い先生です。

子供たちは最初はおとなしく粘土をこねていましたが、徐々に騒がしくなり、立ってうろうろする子も出てきました。
やがて一部の子が楽しそうな遊びを始めました。教室の出入り口に敷いてある緑色のマット、プラスティック製の柔らかいトゲトゲのついた泥を落とすためのものです。

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そのマットに粘土を叩きつけているのです。その形がおもしろく仕上がるようで、数人の子達がマネをしはじめました。積極的な性格のK子ちゃんもその中に加わりました。わたしは、引っ込み思案な性格でしたので、なかなかその輪には加わりませんでした。
やがて席に戻ってきたK子ちゃんにおもしろいからやろうと誘われました。内心ではやってみたかったので、一緒にマットのところに行って粘土を投げつけて遊びました。マットのトゲトゲが綺麗に粘土に残るのがおもしろくて何度かやりました。

しばらくすると、徐々にその遊びにも飽きて、みなそれぞれの席に戻って粘土を作っていました。

担任の先生が戻ってきたとき、先生はすぐにマットが汚れていることに気がつきました。

はぅあぁぁあ、そういえば粘土の一部がくっついてた!

小学生の浅知恵というか、そうなることに気がついてはいませんでした。普段から怖い怖いK岡先生の怒りが爆発しました。やった人は手を上げなさい。

怖い!手を挙げたらどんなに叱られるんだろう・・・。

勇気のある何人かがぱらぱらと手を挙げ始めました。となりのK子ちゃんも手を挙げました。でも私にはとても手を挙げる勇気はありません。手を挙げないとどうなるのかということにも思いがおよびません。K子ちゃんの方を気にしながらも席でじっと固まっていました。

手を挙げた人たちは、前に出てきなさいといわれ、K子ちゃんは前に出て行きました。席を立って前に行くときにチラリと私の方を見て(ズルいよ)という口の動きをしていました。

10人くらいが教室の前に立ちました。実際にそのイタズラをやった人はもっと居たはずです。私を含めて実行犯のうちの半分くらいが手を挙げなかったのです。前に立たされてしばらく叱られた人たちは、手洗い場でマットを洗ってくるように言われました。

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教室から出て行き十数分・・・。

残った私たちも気が気ではありません。黙っていたことがばれたらどうしよう。

洗ったマットを持って『勇気ありグループ』が戻ってきました。再び教室の前に並び、先生にどうなったか言いなさいと言われ、声を合わせて言いました。

「(汚れは) 落ちませんでしたー」

その後、『勇気ありグループ』は席に着くよう促されました。K子ちゃんは席に戻ってくるなり、小さな声で「ズルいよー」と私に言いました。私は目をそらしうつむくことしかできません。

教室の中が、ざわざわしていました。あちらこちらから声が上がっています。『勇気ありグループ』の中から、私のように手を挙げなかった人たちを責める言葉と、先生に言いつける者がでてきたのです。
マットを洗いに行って『みそぎ』が済んだことで、手を挙げなかった『ズルいグループ』に注目が移った感じです。

K岡先生の世にも恐ろしい追求がはじまりました。やった者は前に出なさいと!

この追求を逃れさらに黙っていても、いい方向には向かいそうにありません。既に『ズルいグループ』のメンバーが摘発され始めたからです。このまま黙っていると、周りから指摘されてしまうかもしれないのです。今度は前に出て行くほかありませんでした。

こんなことになるなら・・・と、後悔しても、やってしまったことはどうしようもありません。今度は『ズルいグループ』が教室の前に立ちました。『勇気ありグループ』と同じくらいの人数でした。やはりおとなしいタイプの子が多かった気がします。私と同じく先生が怖かった子も居たはずです。

当然、先生から叱られ、他の子たちからも非難の目が注がれ、いたたまれない感じでした。

ここからの記憶がなぜかぼんやりとしています。叱られたことより、K子ちゃんに『ズルい』と言われたことの方がショックだったのです。

小学2年生以降、高校を卒業するまで同じ学校だったのに、K子ちゃんとは同じクラスになることはありませんでした。また、この事件のことがあったからか、自分から話しかけることもできず、また、K子ちゃんから話しかけられることもなくなってしまったのです。

「ひきょう」だったなぁとこのことを思い出すと同時に、「ひきょう」といえば「ちびまる子ちゃん」の藤木くんのことが思い浮かぶ私なのです。

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